黄や赤に染まった並木の下を、二人が話しながら歩く。午後の光が葉を透かし、落ち葉の散った舗道をどこまでも照らす。南北に延びる公園の帯をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)
名古屋の栄を南北に貫く久屋大通公園は、南の若宮大通から北の外堀通まで約二キロ。幅は車道を合わせて百メートルで、都心の一等地にこれだけ空いているのは戦後の復興計画がそう決めたからです。この日は夕方が空いたので、ひとりで南端から北へ、帯の上だけを通して歩きました。
南端のフラリエから入る。入園無料の庭園が二キロの帯の起点
帯の南端は久屋大通庭園フラリエです。地下鉄名城線の矢場町駅四番出口から南へ徒歩三分、名古屋市の施設で入園は無料、庭園は九時から十七時三十分まで。休みは年末年始だけです。
園路は曲がりながら奥へ続きます。門を一枚くぐるだけで百メートル道路の車の音が遠くなり、夕方の日差しは水面に当たった分だけ黄色く見えます。
北へ向かうと園路が途切れ、そこから幅百メートルの帯がまっすぐ始まります。庭園の曲線から、両側に車道を抱えた直線へ、一歩で切り替わります。

両側を車道に挟まれた細長い公園。ベンチで弁当を広げる人、ベビーカーを押す人、杖をついて歩く人がいて、芝生を横切る人の先に色づいた並木が続く。公園の遊歩道をイメージした生成ビジュアル
北へ約二キロ。幅百メートルは、火を止めるために空けた帯だった
この幅には理由があります。名古屋市立図書館の調査報告によれば、戦後の名古屋の都市計画は戦災復興事業として策定され、幅百メートルの路線二本を含む四十二路線・総延長二百八十六キロが整備されました。百メートルの幅が必要とされたのは、将来の自動車社会を見越しただけでなく、市の中心部の防災・防火機能の強化と美観の向上のためでもあった、と記されています。
つまりこの帯は、公園として構想されたというより、火が飛び越えられない空白として先に確保された土地です。焼けた中心部をつくり直すとき、名古屋は建物を建てない場所を二本だけ決めました。その一本が、いま並木と広場になって足の下に続いています。
区画ごとに人の集まり方が変わります。座っている広場、通り抜けるだけの広場、子どもが走っている広場。一本の線の上で、使い方だけが区画ごとに違います。
帯の途中に一九五四年の塔。展望台は地上九十メートル、その上に窓のない百メートル
帯の北寄りに立つのが中部電力 MIRAI TOWER です。昭和二十九年(一九五四年)に日本で最初に建てられた集約電波塔で、二〇二二年十二月、全国のタワーで初めて国の重要文化財に指定されました。展望台は平日・日曜が十時から二十一時、土曜は二十一時四十分まで。大人千三百円です(二〇二六年九月時点)。
展望階は二層です。屋内のスカイデッキが地上九十メートル、その上のスカイバルコニーは地上百メートルで、窓がない吹き抜けの空間が三百六十度開いています。ガラス越しではなく風のなかで見るので、手すりを握る手に力が入ります。
上から見ると帯の向きがはっきりします。百メートルの空白が南北に伸び、日が落ちる西側はビルの列。帯と光は直角に交わり、夕方の光は横から入ります。

暮れかけた広場。店の灯りがともり、集まって話す人、しゃがんで子どもに話しかける人、買い物袋を提げて横切る人がいる。夕暮れの広場をイメージした生成ビジュアル
地上十四メートルの屋根を一周。一〇六メートル×三六メートルの楕円
塔から北へ進むとオアシス21です。水の宇宙船と呼ばれるガラスの大屋根が、地上約十四メートルに一〇六メートル×三六メートルのオーバル形状で架かり、外周の園路を一周して空中散歩ができます。屋上ひろばは十時から二十一時まで。
九十メートルからだと街は面ですが、十四メートルでは真下の広場を歩く人の動きが見え、街が立体に戻ります。屋根には水が張られ、その水越しに空が見えます。灯りが入りはじめると、空が暗くなるより先に光の出どころが地上へ移ります。
地下には約三十店舗が入る銀河の広場。屋根、広場、店舗が同じ楕円の輪郭で三層に重なっています。
栄駅の東改札を出てすぐ。帯の上に縦に積まれた街
オアシス21は地下鉄東山線・名城線の栄駅の東改札口を出てすぐ、駅と直結です。公園の北側に二〇二〇年九月に開いた Hisaya-odori Park は約四十店舗、久屋大通駅から徒歩一分、栄駅から徒歩八分。宿を栄に取れば、この帯の途中に立つことになります。
火を止めるために空けた一本の帯の上に、庭園と並木と塔とガラス屋根が縦に積まれています。二キロの一本道を歩くだけで、名古屋が中心部をどう決め直したかが順に出てきます。

浅い水盤の石の縁が濡れて光り、落ち葉が張りついている。水面には並木と夕日が逆さに映る。公園の水盤の縁をイメージした生成ビジュアル
この街の歩き方
| 矢場町駅4番出口 → フラリエ | 南へ徒歩3分(入園無料/庭園9:00〜17:30) |
|---|---|
| フラリエ(南端)→ 外堀通(北端) | 約2km/幅は車道を含めて100m |
| MIRAI TOWER 展望階 | 屋内スカイデッキ地上90m/屋外スカイバルコニー地上100m |
| 同 展望台 | 平日・日曜10:00〜21:00、土曜10:00〜21:40(大人1,300円) |
| オアシス21 水の宇宙船 屋上ひろば | 地上約14m/106m×36mの楕円を一周/10:00〜21:00 |
| オアシス21 → 栄駅 | 東改札口を出てすぐ(駅直結) |
| 久屋大通駅 → Hisaya-odori Park | 徒歩1分(栄駅からは徒歩8分) |
南端のフラリエは庭園が17時30分に閉まるので、日のあるうちに先に入ります。MIRAI TOWER の展望台とオアシス21の屋上ひろばは21時まで開くので、高いところは日没後に回せます。
