車の通らない広い通りに朝の光。両側に電器の店が並び、看板の色だけが残っている。開店前の日本橋の電気街をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

明治の日本橋筋は古書店街でした。戦後に自作ラジオ向けの部品や工具を扱う店が現れて電気街になり、いまはゲームやアニメ、フィギュアの専門店が堺筋沿いに並んでいます。売り物は入れ替わっても、通りの幅と店の割り方は残る。開店前の1時間半だけ、店の中身ではなく通りの器を見るために、ひとりで宿を出ました。

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開門は6時、授与所は9時から。朝の今宮戎神社は笹の棚が閉じている

今宮戎神社の開門は6時で、南側の脇門だけは22時まで開いています。いっぽう授与所は9時から、ご祈祷の受付は9時半からです。だから朝のうちは、社殿の前に立てるのに、福笹を授ける棚は閉じたままになります。

御祭神は事代主命。大阪市の案内では、この信仰はもともと漁労民のもので、中世に市神としてまつられ、大阪の商工業の発展とともに商売繁盛の守神になったとあります。1月9日から11日の「十日えびす」には、福笹を求める参拝者が100万人を超えます。

境内の広さは、その3日のためにあります。3日で100万人を受けるだけの面積が、残りの日はほとんど空いたまま置かれている。正面で参拝したあと社殿の裏へ回ってドラを打ち、もう一度願う習慣があり、人のいない朝はその音だけが境内に残りました。最寄りは南海高野線の今宮戎駅で、降りて東へすぐ。堺筋線の恵美須町駅5番出口からは、西へ徒歩約8分です。

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恵美須町駅を出たらもうアーケード。堺筋沿い約1キロが、明治には古書店街だった

恵美須町駅の北A・1B出口を出ると、その足元からアーケードが始まります。大阪観光局は堺筋沿いに約1キロ続くアーケードに150を超える店が並ぶと数え、大阪市は日本橋一帯で約500店の電気・ホビー専門店と数えています。どちらの数え方でも、専門店だけが一本の通りに詰まっている街です。

この通りの来歴は大阪市の資料に残っています。江戸時代は「長町」と呼ばれた宿場町、明治時代は古書店街としてにぎわい、戦後に自作ラジオ向けのパーツや工具を扱う店が現れたのをきっかけに電気街として発展した。「でんでんタウン」の名称は昭和53年の一般公募で決まりました。宿場、古書、ラジオ部品、そしてホビー。同じ1キロで、売り物だけが入れ替わってきました。

シャッターの続く通りを台車が行く

シャッターの続く通りを台車が行く。色づいた街路樹が並び、荷を抱えてしゃがむ人がいる。開く前の通りをイメージした生成ビジュアル

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開店前はシャッターが表になる。絵が描かれているのは営業時間外だけ見える

営業時間は店ごとに違い、朝のうちは大半が閉まっています。看板の光が落ちているので、目に入るのはシャッターの列だけです。

絵が描かれたシャッターがいくつも続きます。開店すれば巻き上げられて消えるので、営業中には成立しない絵です。閉まった鉄の面が、朝のあいだだけ通りの表側になります。

間口の狭い店が延々と続くことも、看板が消えていると分かります。通りは一軒ずつ細かく縦に割られていて、入れ替わるのも一軒単位です。だから売り物が何度変わっても、通り全体が一度に空くことはありませんでした。

閉まったシャッターに絵が描かれている

閉まったシャッターに絵が描かれている。荷を下ろす人、立ち止まって見る人がいて、通りはまだ静かだ。開店前だけ見える絵をイメージした生成ビジュアル

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一本西の細い通りへ。貼り紙の層が、いちばん新しい入れ替わりを示す

アーケードから一本西の細い通りに入ると、幅が一気に落ちます。両側の壁に告知の紙が貼られ、貼り替えの途中のものが多い。剥がしきれなかった端が下から覗いています。

寄って見ると、紙が何層にも重なっています。いちばん上は直近の告知で、その下に前の色が透けている。指で端をめくると、下の紙がわずかに持ち上がりました。夜は看板の光が強くて壁まで目が行きません。灯が消えているあいだだけ、紙の厚みが見えます。

壁に重なった貼り紙の端を、指が一本めくっている

壁に重なった貼り紙の端を、指が一本めくっている。下から古い色が出てきて、層になっているのが分かる。貼り重ねられた紙の層をイメージした生成ビジュアル

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高さ12メートルの獅子頭。口が開いているのは邪気を飲むため

浪速区元町2丁目の難波八阪神社には、獅子頭をかたどった獅子殿があります。高さは12メートル。昭和49年5月に本殿の竣工とあわせて完成し、平成20年末の改修で「建設当時の光芒が復活」したと神社は記しています。

御祭神は素戔鳴尊。大阪市の案内では古来「難波下の宮」と称され、難波一帯の産土神でした。ヤマタノオロチを退治して民の困苦を除いた故事にもとづく綱引神事は、平成13年度に大阪市で初めての無形民俗文化財に指定されています。大きな口は、神社の説明では「邪気を飲み勝運(商運)を招く」ためのものです。正面に人が並ばない時間だと、口の奥の壁まで見通せます。

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この街の歩き方

恵美須町駅5番出口 → 今宮戎神社西へ徒歩約8分
今宮戎神社の開門6時(授与所は9時から)
恵美須町駅北A・1B出口 → でんでんタウン出口すぐ
アーケードの長さ堺筋沿いにおよそ1キロ
でんでんタウン → 日本橋駅5番出口徒歩5分

授与所が開く九時より前に今宮戎神社を見ておくと、境内の広さが何のためにあるのかだけを先に確かめられます。堺筋のアーケードは開店前に南から北へ抜けると、看板ではなく間口とシャッターが見え、そのまま日本橋駅側に出られます。難波八阪神社は公式に徒歩時間の記載がないので、時間に余裕をみてください。