天井の低い地下の通路が、まっすぐ奥へ延びる。中央のガラス天窓から光が落ち、床の黄色い点字ブロックが二本、行き交う人の流れとともに遠くまで続く。札幌の地下歩行空間をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

札幌の都心は、地上に出ないまま縦に歩ける。JR札幌駅から大通までは約520メートルの地下の通りが一本通り、その先はすすきのまで地下でつながっている。2011年3月12日にこの一本が開通してから、札幌駅と大通は別々の街ではなくなった。ひとりの出張で、動けるのは夕方から翌朝まで。飲み代の上限は三千円と決めている。

01

地下は5時45分から24時30分まで。先に「地上に出ない」と決める

札幌駅前通地下広場、地元でいうチカホの通行可能時間は5時45分から24時30分まで。いっぽう大通のさっぽろ地下街は10時から20時で、年中無休。開いている時間が違うので、この二つを先に押さえておくと、雪の日でも動きが崩れない。

出張で損をするのは、天気で予定が読めなくなることだ。読める動線を一本持っておく。階段を下りると、外の風の音がひと息で消えた。

天井の照明がまっすぐ奥へ続く地下の通路

天井の照明がまっすぐ奥へ続く地下の通路。磨かれた床に灯りが長く映り、鞄を提げた人、柱にもたれて携帯を見る人、コートの人が、それぞれの速さで歩いていく。地下の通路をイメージした生成ビジュアル

02

札幌駅の真下で先に食べる。大通の地下街は20時で閉まる

札幌駅の真下にアピアがある。JR札幌駅と地下鉄さっぽろ駅に直結した地下街で、飲食を含めて約100店舗。ショッピングは10時から21時、レストランは11時から21時30分、無休だ。

先に食べる理由は時間割にある。南へ向かった先の地下街は20時で閉まるので、腹を空かせたまま歩き出すと、買い物の時間のほうが先に消えてしまう。ひとりなのでカウンターでいい。三千円という上限があると、注文でも迷わない。

03

駅から大通へ520メートル。真ん中12メートルが通路、両脇4メートルが広場

アピアを出て南へ。チカホは地下鉄南北線さっぽろ駅から大通駅までを、約520メートルで一本に結ぶ。総幅員は20メートル。内訳は歩行空間が12メートル、その両脇に4メートルずつの「憩いの空間」だ。

歩くと、床のタイルで境目が見える。中央の白いタイルが通路、両脇のグレーのタイルが広場部分で、ベンチと机が置かれ、日によって物産展や展示が出ている。北3条の交差点の下には300平方メートルの広場もある。両脇の合わせて8メートル分は、歩くためではなく留まるために取られている。だから通路というより、細長い広場に近い。

この一本は近道として効いただけではない。開通から9年後、札幌駅前通の地上と地下を合わせた通行量は約2.4倍の1日9.0万人に増え、沿道の地価は開通前の約2.2倍になった。札幌駅と大通という二つの街区が、地下の520メートルで一本の動線になった結果だ。

地下の通路に小さな店が並ぶ

地下の通路に小さな店が並ぶ。カウンターで食事をする人、服を選ぶ人、立ち話をする人が、それぞれ別のことをしている。地下街の店先をイメージした生成ビジュアル

04

大通で二方向に分かれる。東へ312メートル、南へ400メートル

大通に着くと、地下街が二方向に分かれる。東はオーロラタウンで312メートル、南はポールタウンで400メートル。ポールタウンは南北線すすきの駅まで届いている。

買い物は東を先に。オーロラタウンをそのまま進めば、さっぽろテレビ塔まで地上に出ずに着く。テレビ塔の公式案内にも、チカホからオーロラタウンをたどればJR札幌駅から地上に出ずに来られると書いてある。地下鉄大通駅の27番出口が足元だ。荷物は増えるが、20時を過ぎると地下街では買えなくなるので、迷ったら先に買う。

05

大通からバスセンター前へ。通路の壁が、駅構内で日本一長いギャラリーになっている

大通駅から東西線バスセンター前駅までの地下コンコースは、そのまま「札幌大通地下ギャラリー500m美術館」になっている。ガラスケースが8基で96メートル、壁の展示区間が9か所で118メートル。駅施設内の通路に設けられたギャラリーとしては日本で最長として、2011年11月3日に常設化された。

観覧は無料で、照明が点いているのは7時30分から22時まで。入館という構えが要らないので、横を通り過ぎていく人の脇で立ち止まれる。これだけの長さの展示が成り立つのは、札幌の都心にこれだけの地下通路があるからだ。展示は入れ替わるので、同じ通路を何度歩いても同じにはならない。

磨かれた床のタイルが画面いっぱいに広がり、左手で湯気の立つ惣菜のカウンターが灯る

磨かれた床のタイルが画面いっぱいに広がり、左手で湯気の立つ惣菜のカウンターが灯る。奥をスーツケースを引く人が通る。地下街の床と惣菜の店先をイメージした生成ビジュアル

06

翌朝、同じ520メートルを北へ歩く

朝のチカホは、流れが一方向に揃う。夜は袋を持った人で真ん中が空かないが、朝は同じ520メートルが短く感じる。両脇のグレーのタイルの上にいる顔ぶれも、夜と朝では入れ替わっている。

5時45分から開いているので、早い便に乗る日でも、地上に出ずに札幌駅まで戻れる。傘を持たない理由は、この時間のほうにある。

07

この街の歩き方

アピア(札幌駅直結・約100店舗)ショッピング10:00〜21:00/レストラン11:00〜21:30・無休
札幌駅→大通(チカホ)約520メートル・通行可能5:45〜24:30
大通→テレビ塔方向(オーロラタウン)312メートル・地下街は10:00〜20:00
大通→すすきの(ポールタウン)400メートル・地下街は10:00〜20:00
大通→バスセンター前(500m美術館)観覧無料・照明点灯7:30〜22:00

大通の地下街が20時で閉まるので、買い物はその前に済ませます。500m美術館は22時まで、アピアの飲食は21時30分まで開いているので、そちらは後ろに回しても間に合います。