朝市の木箱の前で、男性の客が柿をひとつ手に取って眺めている。箱には柿、大根、茄子、青菜が山になり、奥で店の人が手を動かす。仙台朝市をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)
仙台の中心部の緑は、昭和20年の仙台空襲でいちど焼失している。今ある青葉通の街路樹も、西公園の緑も、そのあとに作り直したものだ。そして駅の西側には、一人分から買える市場が70店舗ほど並んでいる。ぼくは仙台駅西口の宿にひとりで3泊し、3日目を観光ではなく生活の買い物にあてた。
3泊目は観光をやめて、生活の買い物にする
1泊目は移動で終わる。2泊目に街を歩く。3泊目に何をするかで、その滞在の質が決まる。
ぼくの答えは買い物だ。観光ではなく、生活の買い物をする。これは1泊では成立しない。買っても持ち帰れないからだ。3泊なら、買ったものを部屋で食べて終われる。
仙台朝市は8時から。日曜と祝祭日は休みなので、日程を組む段階で確認する
仙台朝市は仙台駅から約5分。70ほどの店舗が並び、営業は8時から18時(店舗により若干異なる)。定休日は日曜日と祝祭日だ。3泊の日程を組むときは、買い物の日が日曜や祝日に当たらないかを先に見ておくほうがいい。

朝の市場の通り。湯気の立つ店先で品を選ぶ人、袋を提げて歩く人が並び、両側の軒が奥まで続く。朝の市場の通りをイメージした生成ビジュアル
魚も総菜も一人分から買えるので、ひとりでも量を持て余さない。氷の匂いと揚げ物の匂いが交互に来る。買ったのは果物と総菜で、その日に食べる分だけだ。
店ごとに置いているものが違うので、一周してから決めた。値札の書き方も店ごとに違う。手書きの店と印刷の店がある。

ステンレスの台に惣菜の小さなパックが二列に並ぶ。手前でトングが一人分を詰めている。奥は青果のクレート。一人分から買える惣菜の売り場をイメージした生成ビジュアル
朝市から青葉通へ。この並木は焼け野原を復興するために植えたもの
朝市を出て青葉通に入ると、道の性格が変わる。市場の通りは商品が路面まで出てくるが、青葉通は歩道と街路樹で幅が決まっている。ケヤキ並木の区間は青葉区中央1丁目から大町2丁目まで。仙台空襲で焼け野原になった中心街を復興するために植えられた並木で、樹齢100年以上の大木もある。
仙台市の説明では、「杜の都」の杜は自然の森ではなく、人がていねいに手入れをしてきた緑を指す。空襲で焼けたあと、青葉通や定禅寺通などの街路樹と、青葉山公園や西公園などの緑によって「杜の都」が再現された。広い道に木を植えたのは景色のためだけではなく、復興計画そのものだ。
10月の後半で、葉が色づきはじめていた。ケヤキは一斉には変わらず、一本ずつ違う速度で進む。だから通りを歩くと緑と黄が混ざって見える。そろっていないほうがきれいだった。
地下鉄3分の西公園は明治8年開園。焼けて翌春に芽吹いたイチョウがある
西公園へは地下鉄東西線で行く。仙台駅から大町西公園駅までは2.3キロ、3分。西公園は明治8年に開園した、仙台市内で最も古い都市公園だ。
園内には伊達政宗ゆかりの臥龍梅がある。そして仙台空襲で焼けたが、翌春に芽吹いたイチョウの古木が立っている。青葉通の並木が「焼けたあとに植えたもの」なら、このイチョウは「焼けても残ったもの」だ。同じ空襲の話が、通りと公園で別の形になって残っている。
こけし塔も立っている。昭和36年に仙台商工会議所が中心となり、伝統工芸と観光振興のシンボルとして建てられたものだ。昭和58年に塗装され、令和5年3月に再塗装されている。由来が分かると、公園の中の異物ではなくなる。
広瀬川沿いには園路がある。青葉通の整った感じとは違って、地面に起伏がある。木の植わり方も不揃いで、土がむき出しの場所があった。天文台と野球場、プールも同じ公園の中にある。川の音がした。街のなかでこの音が聞こえるのは珍しい。

川沿いの並木道に落ち葉が積もる。自転車が停めてあり、土手には腰を下ろした人。対岸に街の建物が低く続く。川沿いの並木道をイメージした生成ビジュアル
屋根の下で足りないものを買い足す。マーブルロードおおまち
買い足すものは屋根の下で済ませる。マーブルロードおおまちは東二番丁通から東一番丁通まで通じる商店街で、東二番丁側にアーケードがある。仙台駅から徒歩約10分。
東二番丁側にはオルガンが設置されていて、毎月2回(土曜、不定)生演奏がある。屋根のある商店街は、日本に来て最初に驚いたもののひとつだ。雨でも買い物ができる。入口で傘を畳んだ人が、そのまま奥へ歩いていった。
ぼくは靴下を買った。3日目になると、こういうものが要る。観光の記事には出てこないが、実際の滞在ではこれがいちばん効く。
市場、植え直した通り、焼け残った木。順番に意味がある
朝市は一人分から売る市場、青葉通は復興のために木を植えた通り、西公園は市内最古で焼けても芽吹いた木がある公園だ。同じ中心部に、生活の買い物と、焼けたあとの作り直しが並んでいる。
朝市は8時開店、公園の緑は日中、アーケードは天気に関係なく使える。三つの時間の性質が違うので、回る順番は自然に決まる。
この街の歩き方
| 仙台駅 → 仙台朝市 | 徒歩約5分 |
|---|---|
| 仙台朝市 | 8:00〜18:00(店舗により異なる)・日曜/祝祭日休・70ほどの店舗 |
| 青葉通のケヤキ並木の区間 | 青葉区中央1丁目〜大町2丁目 |
| 仙台駅 → 大町西公園駅(地下鉄東西線) | 2.3km・3分 |
| 西公園 | 明治8年開園・仙台市内で最も古い都市公園 |
| 仙台駅 → マーブルロードおおまち | 徒歩約10分 |
朝市は八時開店で日曜と祝祭日が休みなので、三泊の日程を組む段階で買い物の日を決めておく。先に朝市で食べるものを確保し、青葉通と西公園は「焼けたあとに植えた緑」と「焼けても残った木」を続けて見る順にする。アーケードのある商店街は雨天でも歩けるので、天気の悪い時間帯に回す。
