川沿いに白い天幕が連なり、かぼちゃや大根、柿が台に並ぶ。朝靄の立つ浅い川の向こうには、黒い木造の家並みと色づいた山。川沿いの朝市をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)
高山の古い町並は、商人のためにとられた区画の上に残っています。高山市の説明では、金森氏がつくったのは商業経済を重視した城下町で、町人地は武家地の一・二倍の広さがありました。妻と二人、朝食のあとに宿を出て、昼前までに歩ける範囲で組みました。
鍛冶橋から弥生橋まで約七百メートル。朝市は正午で終わる
宮川朝市は鍛冶橋から弥生橋にかけて、約七百メートルにわたり露店が続きます。開催は四月から十一月が午前七時から十二時、十二月から三月は午前八時から十二時。売り切れ次第閉める店もあります(二〇二六年九月確認)。宿はJR高山駅東口から徒歩五分なので、朝いちばんに動くならここが最初です。
並ぶのは地元で採れた野菜や果物、山菜、漬物、民芸品、季節の花です。量り売りの店と一山いくらの店が混ざり、崩れそうな高さまで積む店と、低く平らに並べる店がありました。正午で終わるので、迷って戻るより端まで見てから買うものを決めたほうが早い。七百メートルを歩くあいだ、宮川の水音が通りの終わりまでついてきます。

川沿いに白い天幕の並ぶ朝市。厚い上着の年配の人が野菜を袋に入れ、買い物袋を提げた人が通りを歩く。川面から朝靄が立ち、対岸に古い木造の家並みが続く。川沿いの朝市をイメージした生成ビジュアル
徒歩十五分の三筋の通り。間口は三間から四間、屋根高は四・五メートル
古い町並はJR高山駅から徒歩十五分。上町・下町の三筋の通りが国の重要伝統的建造物群保存地区で、出格子の町並みと軒下を流れる用水が続き、杉の葉を玉にした酒ばやしを下げた造り酒屋が七軒あります。店が開くのは九時頃からです。
保存地区は約四・四ヘクタール、南北約四百二十メートル、東西約百五十メートル。町家は間口が三間から四間と狭く奥に深い造りで、屋根高は四・五メートルと低い。正面の幅が狭い建物が途切れず続き、視線が上に行かないぶん、軒下の水と格子の木が近く見えます。
朝市を端まで歩いてから入ると、露店の声が引いて、水の音と格子だけが残ります。町人地を広くとった城下町の名残が、三筋ぶんの長さで残っています。
十四室すべて入館無料。春慶の木目は、漆が透けてから出てくる
飛騨高山まちの博物館は駅東口から徒歩約二十分。十四の展示室があり、入館無料で、展示室は午前九時から午後七時、無休です。
そのなかに飛騨春慶があります。高山市の説明では、およそ四百年前の慶長年間、高山城下で社寺の造営に当たった名工高橋喜左衛門が、打ち割った木目の美しさに心打たれ、透き漆で塗り上げさせたのがはじまりです。時とともに次第に漆が透け、美しい木目が浮き出てきます。文化庁の説明では、木地の木目が見える透明な漆を使うため、素材の見立てから漆塗まで高い技術が要求されます。
漆そのものの条件も展示で知りました。香川県の説明では、漆が乾くには酵素を活性化させる温度が二十五度程度、湿度が七十五パーセント程度必要です。乾かすほど早く仕上がると思い込んでいたので、逆でした。木目を見せるために木地を選び、湿りのある場所で塗りを固める仕事が、この城下町で始まっています。

格子戸の家が続く石畳の通り。軒には丸い杉玉が下がり、脇の水路に手を伸ばす人や連れ立って歩く人がいる。格子の町並みをイメージした生成ビジュアル
駅から徒歩十分の陣屋。御蔵のヒノキに飛騨匠の技法が残る
高山陣屋は駅から徒歩十分。観覧は四月から十月が八時四十五分から十七時(入場は十六時三十分まで)、十一月から三月は十六時三十分閉館。料金は五百円、高校生以下は無料です(二〇二六年九月確認)。
元禄五年に幕府が飛騨を直轄領にしてから明治維新までの百七十七年間に、二十五代の代官・郡代が江戸から派遣されました。陣屋の公式説明では、幕末に全国で六十あったといわれる郡代・代官所のうち、主要な建物が今も残るのはここだけです。
御蔵は高山城三ノ丸の米蔵を元禄八年に移築したもので、近隣の村から集めた年貢米を納めた蔵です。慶長年間のもので、良質のヒノキが使われ、仕上げも蛤刃手斧、年代・規模ともに全国有数の穀物土蔵とされ、飛騨匠の建築技法が認められます。土間では材の太さを確かめるために自然に上を向くことになります。木目を見せる漆器と、年貢米を受けた蔵。どちらも木を読む手の仕事です。
徒歩二十五分の先に、目通り七メートル・高さ三十九メートルの杉
日枝神社は駅から徒歩二十五分。拝殿の前の大スギは推定樹齢千年、目通り約七メートル、高さ約三十九メートルで、昭和三十一年に県の天然記念物に指定されています。参道は紅葉の名所で、秋は敷石の上まで赤い葉が落ちます。
見上げると首が痛くなりますが、効くのは目通り七メートルの太さです。幹に近づいて回ると、一周するのに歩数がいります。正午で終わる朝市、昭和五十四年に選定された保存地区、推定千年の杉が、歩いて二十五分の範囲に並んでいます。

透き漆の下から木目が琥珀色に透ける盆と重箱。刷毛目のわずかなむらまで見える。木目を見せる漆器をイメージした生成ビジュアル
この街の歩き方
朝市だけが正午で終わり、陣屋は八時四十五分、町並みの店は九時頃からなので、朝市を先に済ませると残りが順に開いていきます。まちの博物館は無休で午後七時まで開くので、徒歩二十五分の日枝神社に向かう日は博物館を後ろに回せます。
| 高山駅東口から宿 | 徒歩五分 |
|---|---|
| 宮川朝市(鍛冶橋〜弥生橋) | 約七百メートル、四〜十一月は七時〜十二時 |
| 高山駅から古い町並(三筋) | 徒歩十五分、店は九時頃から |
| 高山駅から高山陣屋 | 徒歩十分、八時四十五分開場・五百円 |
| 高山駅東口からまちの博物館 | 徒歩約二十分、十四室・無料・九時〜十九時 |
| 高山駅から日枝神社 | 徒歩二十五分 |
