日が落ちた直後、空にまだ青と橙が残る時間の川。大きな木の水車が流れだけで回り、カゴ状の羽から持ち上がった水が糸になって落ちる。千歳川の水車をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

新千歳空港の前泊を駅前に変えると、徒歩10分の千歳川で、明治29年から電気を使わずに回り続けるサケ捕獲装置に夜でも会える。空港より先にあった川と街の順番をたどる記事
千歳は、川とサケが先にあってできた街だ。市街地を流れる千歳川では明治29年から人の手でサケを捕り続けていて、その装置は電気を使わずに24時間回っている。空港の駅ができたのは1992年、街の名前が付いてから180年以上あとのことだ。私はひとりの出張で、翌朝が早い便のときも空港ではなく千歳駅前に泊まる。

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空港ではなく駅前に泊まる。空港駅と千歳駅のあいだには南千歳駅がある

新千歳空港駅と千歳駅は隣同士ではない。あいだに南千歳駅があり、ここが室蘭・帯広方面への乗り換え駅になっている。空港から千歳の市街地へ出るのは、一駅ぶんの移動ではない。

それでも駅前に泊まる理由は、歩ける距離に街の成り立ちがあることだ。千歳川のインディアン水車までは、JR千歳駅から徒歩約10分。夜に部屋を出ても、川まで行って戻る時間はある。

夜のホーム

夜のホーム。長い庇の下に蛍光灯が一列に並び、ベンチに離れて座る二人と、荷物を引いて立つ人がいる。縁の点字ブロックが端まで続き、向こうは暗い。乗り換えの駅をイメージした生成ビジュアル

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駅構内の観光案内所は17時まで。荷物を預けるなら前日の夕方

千歳観光案内所はJR千歳駅の構内にある。営業は朝9時から17時、休みは12月30日から1月3日だけだ。夜に着く便では閉まっている。

手荷物預かりがあり、45センチ未満の小型が1日540円、45センチ以上の大型が1日1080円、大型の2時間が540円(2026年9月時点)。翌朝に身軽で歩きたいなら、前日の17時までに寄る使い方になる。正面にはリンゴ箱を再利用した本棚があり、本を交換するブックエクスチェンジが置かれている。黒板と木材を使った内装で、案内所というより読む場所に近い。

木の林檎箱を横に並べて固定した壁一面の棚

木の林檎箱を横に並べて固定した壁一面の棚。それぞれの箱に文庫本が詰まり、何冊かは上に平積みされている。本を交換できる棚をイメージした生成ビジュアル

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徒歩約10分の千歳川。水車は電気を使わず、24時間回っている

駅から川の方向へ歩くと、千歳川にインディアン水車がある。観光用の飾りではなく、さけ・ます人工ふ化放流事業に使うサケの親魚を捕るための装置だ。動力は水力だけで、24時間回り続ける。回転は1分間に約4回から5回。

羽の部分はカゴ状になっていて、遡上しようとするサケが自分から飛び込み、カゴからいけすに落ちる。捕獲数は年間約20万尾。大雨のあとには1日1万匹以上捕れる日もあり、最多記録は1日3万尾以上だ。電気を使わないので、夜に来ても止まっていない。暗くて魚の姿は見えないが、枠が水を切る音と、ときどき跳ねる音がする。

設置は例年7月中旬、撤去は12月上旬。採卵用の親魚の捕獲は8月20日ごろから始まる。この期間の外に来ると、川に水車はない。

平らな街を、幅のある川がゆっくり流れる

平らな街を、幅のある川がゆっくり流れる。草の土手と遊歩道が水際に続き、竿を置いて立つ人、自転車をはさんで話す二人、少し離れて草に座る人。部屋を出てから行って戻れる距離の川をイメージした生成ビジュアル

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明治29年11月に初めて使われた。名前はコロンビア川から来ている

設置と撤去が毎年繰り返されているが、この仕掛け自体はずっと古い。この水車が千歳川で初めて使われたのは、明治29年11月だ。インディアン水車という呼び方は、もとになった仕掛けがインディアン地区のあるコロンビア川で使われていたことに由来し、昭和46年ごろから一般化した。

明治の北海道でサケを増やすために持ち込まれた道具が、そのまま同じ川で動いている。千歳川の水源は支笏湖で、市街地から車で約30分。日本最北の不凍湖から流れてくる水が、サケの遡上する川をつくっている。飾りではないから、夜に見ても手を抜いた姿にはならない。

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道の駅は朝9時開店。夜のうちに配置を見ておくと翌朝が早い

水車のある花園2丁目には、道の駅サーモンパーク千歳が隣接している。農産物直売所とレストラン、フードコートがあり、サケのふるさと千歳水族館も隣接施設だ。営業は朝9時から17時で年中無休。JR千歳駅からは徒歩約15分。

夜は当然閉まっている。それでも歩くのは翌朝の段取りのためだ。どの建物に入口があるか、駐車場から売り場までどれくらいか。朝9時開店なので、昼の便ならチェックアウト後に一往復できる。

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千歳という名前は1805年から。川が先で、空港の駅は1992年

道の駅にも空港にも「千歳」が付く。この地名はいつからのものか。この土地はアイヌ語で「シコツ」と呼ばれていた。1805年、鶴が多く飛来することから「鶴は千年、亀は万年」の故事にちなんで千歳と名づけられた。市の面積は594.5平方キロメートルで、東京23区とほぼ同じ広さだ。

新千歳空港駅が開業したのは1992年7月1日。川が先、街の名前が次、空港の駅が最後になる。空港に前泊すると、この順番は見えない。駅前に出れば、歩いて10分の川で、明治から続く捕り方がまだ動いている。

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この街の歩き方

JR千歳駅 → インディアン水車徒歩約10分
JR千歳駅 → 道の駅サーモンパーク千歳徒歩約15分
千歳観光案内所(千歳駅構内)9:00〜17:00/12月30日〜1月3日休
手荷物預かり小型45cm未満1日540円・大型45cm以上1日1,080円
道の駅サーモンパーク千歳9:00〜17:00・年中無休
インディアン水車の設置期間例年7月中旬設置〜12月上旬撤去
千歳市街 → 支笏湖車で約30分