澄んだ浅い川に、大きな木と鉄の水車が立つ。腕についたカゴ状の羽が流れだけでゆっくり回り、持ち上がった羽から水が糸になって落ちる。水の中には背の黒い魚が何尾も流れに向かって止まっている。千歳川のインディアン水車をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

千歳という地名は、鶴から付いた。空港の名前として全国に知られている街だが、名前のほうが空港より100年以上古い。街の中心を千歳川が流れていて、秋はここにサケが上がる。前泊の朝に3時間あったので、鶴とサケ、この街の名前と産業の出どころを歩いて確かめた。

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地名は1805年に付いた。アイヌ語「シコツ」から「鶴は千年」へ

千歳一帯は、かつてアイヌ語で「大きなくぼみ」を意味する「シコツ」と呼ばれていた。文化2年(1805年)、箱館奉行に新しい地名を付けてほしいと願い出る。当時この一帯には多くの鶴が空を舞っていて、「鶴は千年、亀は万年」の故事にちなんで「千歳」と命名された。

つまり地名の由来は、そこにあった風景そのものだ。市の面積は594.50平方キロメートルで、東京23区とほぼ同じ大きさ。鶴が舞う空の広さが、この数字からも見当がつく。

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駅から徒歩約10分で千歳川。水力だけで24時間回るインディアン水車

駅から徒歩約10分で千歳川に出る。秋の遡上シーズンだけ、川にインディアン水車が架かる。サケの親魚を捕らえるための水車で、年間およそ20万尾をここで捕獲する。設置されるのは、例年8月下旬から12月中旬頃だ。

電力を使わない。水力だけで24時間回り続ける。羽の部分がカゴ状になっていて、産卵のために遡上しようとするサケがみずから飛び込み、カゴからいけすに落ちる。多い日には1日で1万匹以上が捕獲される。

水車にかかる瞬間を狙うなら、大群が遡上する確率が高い大雨の後がいい。ぼくが立った朝は静かで、羽が水を掻く音だけが続いていた。

この水車は、見せるために架かっているのではない。親魚を捕らえるために架かる。見学はそのついでで、川岸に立つとここが漁の現場だと分かる。20万尾という数字は、この音がひと秋ぶん続いた結果だ。

平らな北国の街を、穏やかな川がまっすぐ抜けていく

平らな北国の街を、穏やかな川がまっすぐ抜けていく。両岸の低い屋根と木立が水平に続き、水面が低い光を返して、川だけが明るい帯になる。草の土手の道に、しゃがんで水を見る人、上流を向く人。街の真ん中を流れる川をイメージした生成ビジュアル

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同じ川を横から見る。日本初の水中観察ゾーンは9時から

上から見た川を、横から見られる場所が同じ川沿いにある。サケのふるさと千歳水族館の、日本初の「水中観察ゾーン」だ。ガラス越しに千歳川の川底を直接観察できる。開館は9時から17時で、駅から約10分。前泊の朝でも入れる時間だ。

水車で「捕る」側を見たあとに、川の中で「上る」側を見ることになる。この順番だと、20万尾がどこを通ってきた数字なのかが具体になる。季節ごとに川底の様子が変わるので、遡上期以外に来ても中身は違う。

浅い流れの丸い砂利の上を、黒ずんだ体に赤い帯の出た魚が群れで上っていく

浅い流れの丸い砂利の上を、黒ずんだ体に赤い帯の出た魚が群れで上っていく。背が水面を割り、尾が水を叩いて細かい波を横へ逃がす。岸の濡れた砂利に長靴の跡が残っている。産卵のために川を上っていく魚をイメージした生成ビジュアル

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青葉公園は一周3.6キロ。入場時間の制限がないので、朝の調整に向く

時間が余ったら青葉公園へ。東京ドーム約22個分の面積があり、園内にはプール、テニスコート、陸上競技場、野球場、サッカー場など17箇所の施設が整備されている。市の中心から車で約5分だ。

全部は歩けないので、公園を一周する3.6キロのランニング・ウォーキングコースの一部だけを歩いた。入場時間に制限がないので、開館を待つ必要がない。雑木林に囲まれていて、地面が柔らかく、靴の裏が沈む。飛行機の音が遠くに聞こえるだけで、空港の近くにいる感じが消える。

春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪と、同じコースで季節ごとに中身が変わる。10月は雑木林の色が動きはじめる時期だった。前泊が何月であっても、この公園は同じ3.6キロで受けてくれる。

雑木林のなかを柔らかい土の道が曲がっていく

雑木林のなかを柔らかい土の道が曲がっていく。葉は色が動きはじめたところで、道の脇に落ち葉が溜まる。細い幹のあいだで道が折れて、その先は見えない。走る人、靴を結び直す人。地面が柔らかく靴の裏が沈む道をイメージした生成ビジュアル

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空港は車で約10分先。国内線の乗降客数は羽田に次ぐ

新千歳空港の国内線乗降客数は羽田空港に次ぐ国内第2位で、国際線はアジアを中心に20都市以上と結ばれている。北海道の空の玄関だ。その空港へは、JR千歳駅から車で約10分。

空港の近くに泊まると、朝が待ち時間になりやすい。ただ千歳の場合、駅から徒歩約10分のところに地名の由来になった鳥の話と、サケが上る川が揃っている。3時間あれば、両方を見てから飛べる。

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この街の歩き方

JR千歳駅 → インディアン水車徒歩約10分(設置は例年8月下旬〜12月中旬頃)
JR千歳駅 → サケのふるさと千歳水族館徒歩約10分・9:00〜17:00
青葉公園一周3.6kmのコース・入場時間の制限なし・市の中心から車で約5分
JR千歳駅 → 新千歳空港車で約10分

水車は屋外で時間の制約がないので先に見て、川底を横から見る水中観察ゾーンは9時の開館に合わせると待ち時間が出ません。水車にかかる瞬間を狙うなら大雨の翌朝です。青葉公園は入場時間の制限がないので、時間が余ったときの調整先に向いています。