日が落ちたばかりの川に、対岸のビルの灯りが長く伸びる。空にはまだ青と橙が残り、石段には川を眺める人の姿。夕暮れの川沿いをイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

春吉は、那珂川の西側に沿って南北に連なる細長い地域です。東西に短いのは、街の形が川と江戸時代の武家屋敷の並びで決まっているからで、その名残はいまも横筋の道の向きに残っています。ひとりで、日が落ちるまでの一時間ほどを使い、宿から川までを南北と東西に一往復しました。

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南北に歩くと、東西に短い理由が分かる

福岡市の校区紹介には、春吉は「那珂川西側沿いに南北に連なる細長い地域」と書かれています。起点にした宿は福岡市中央区春吉3丁目13-19、地下鉄天神南駅から徒歩5分、天神駅から徒歩8分の位置です。宿を出て南北に歩くと道は先へ続き、東へ折れるとすぐ川に出ます。

台湾の街区は碁盤に近い形が多く、どちらへ歩いても通りの長さがあまり変わりません。春吉は歩く方向で距離の感覚が変わります。方角を一度つかむと、迷う場面がほとんどなくなります。

日が落ちたばかりの川沿い

日が落ちたばかりの川沿い。石段に腰かけて川を見る人がいて、その後ろを買い物袋を提げた人が歩く。対岸のビルの明かりが水面に長く伸びる。川沿いの道をイメージした生成ビジュアル

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横筋に入る。一番丁から七番丁という町名が、道の間隔に残っている

同じ資料に、江戸時代の春吉には藩士たちが住み、当時の組屋敷の名残から横筋に一番丁から七番丁という町名があった、と書かれています。那珂川沿いに土手が築かれていたことから、土手町という町名もありました。

横筋とは、南北の軸に対して東西に切れている道です。歩いてみると東西の道は短く、数十歩で次の南北の道に突き当たります。屋敷の一列がひとつの町名だった並びが、いまの道の間隔として残っています。番丁の町名は残っていませんが、区切りの幅は歩けば分かります。

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渡辺通りのビル列から一本裏へ。建物の高さが二階分まで落ちる

いまの春吉は、渡辺通りを中心にビジネス街を形成しています。福岡市の同じ資料は続けて「林立するビルの谷間には、戦前からの家並みが軒を連ねており、人情味あふれる下町の情緒も残している」と書いています。市の文書にこの一文が入っているので、裏へ回る理由がはっきりします。

ビルの列から一本入ると、建物の高さが二階分まで落ちます。わたしは壁を触りました。モルタルの表面がざらついていて、細かい割れが入っています。指を当てると、割れの幅が爪の厚みほどです。

音も変わります。ビルの側では車の音が壁に跳ね返り、こちらでは音が上へ抜けていきます。日が斜めに入り、低い建物の影が道を横切ります。

低い夕日が路地のつき当たりから差し込む

低い夕日が路地のつき当たりから差し込む。戸口で話す二人、買い物袋を提げて通りを渡る人がいて、鉢植えと自転車が軒先に並ぶ。夕方の路地をイメージした生成ビジュアル

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東へ出て那珂川。石積みを再現する約1,600mの護岸

裏道を東へ抜けると那珂川に出ます。福岡市は「リバーフロントNEXT」として、那珂川沿いの須崎公園から清流公園までのエリアで、川に向かって開かれた水辺のまちづくりを進めています。護岸は清流公園上流部から須崎公園下流部までの約1,600mで、老朽化対策に加え、昔ながらの石積み護岸を再現して親しみやすい水辺空間をつくる整備が行われています。川岸の高さと石の積み方を見ながら歩ける区間です。

この川は二級河川那珂川水系那珂川で、管理しているのは福岡県です。福岡県は令和5年5月1日、那珂川の河川区域内の一部を都市・地域再生等利用区域に指定しました。これにより、広場やイベント施設、遊歩道、船着場のほか、飲食店やオープンカフェ、広告板、照明を河川区域に置けるようになっています。台湾の川沿いは自転車道と公園が主で、河川の敷地そのものに店が並ぶ形はあまり見ません。川を空地として扱うか、店を置ける場所として扱うかの差です。

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春吉橋の広場は、撤去しなかった工事用の橋の上にある

橋のたもとに広い場所があります。春吉橋迂回路橋上広場で、福岡市が令和5年4月に暫定供用を開始し、水辺の回遊拠点として位置づけています。

もとは国道202号国体道路の春吉橋を架け替える工事のための迂回路橋です。国土交通省九州地方整備局福岡国道事務所の資料には、工事中に使用した迂回路橋を仮橋ではなく永久橋とすることで賑わい空間として活用し、地域活性化を支援する、永久橋化の費用は福岡市が負担する、と書かれています。工事が終われば消えるはずだった橋を、消さないと決めた橋です。隣接する清流公園も、福岡市がPark-PFI制度を使って再整備を進めています。

手すりを触ると金属で、塗装の粒が指先に引っかかります。橋の上は車道から切り離されているので、真ん中で立ち止まれます。日が落ちると対岸のビルの窓に明かりが入り、その光が水面で縦に伸びます。

石積みの護岸に錆びた鉄の輪が残り、すぐ下を川の水が満たしている

石積みの護岸に錆びた鉄の輪が残り、すぐ下を川の水が満たしている。水面には対岸の灯りが長く揺れる。川沿いの石積みと係船環をイメージした生成ビジュアル

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この街の歩き方

地下鉄天神南駅 → 春吉3丁目(起点の宿)徒歩5分
地下鉄天神駅 → 春吉3丁目(起点の宿)徒歩8分
清流公園上流部 → 須崎公園下流部(那珂川沿いの護岸整備区間)約1,600m
朝食(1Fレストラン・ビュッフェ)7時〜10時、最終入店9時30分/前売り2,000円、当日2,200円

南北の通り、横筋、川の順に歩くと、街の形を決めた要素を古い順にたどれます。宿のレストランは朝食営業のみで夕食の提供がないので、渡辺通りの裏を歩くあいだに店を決めておくと、橋の広場から戻ってそのまま入れます。