岸辺の石が透けて見えるほど澄んだ湖。浅いところは淡い碧、沖は深い青へ変わる。対岸には森に覆われた山がそびえ、水際にひとり、旅人が立っている。支笏湖の湖畔をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

約4万年前、支笏火山の噴火でできた陥没地に水が溜まった。それが支笏湖で、最大深度は約360m、秋田県の田沢湖に次いで国内二位の深さがある。深いぶん全面が凍らず、日本最北の不凍湖とされている。苫小牧市中心部から国道276号で25km、約30分。ひとりなので、湖畔で見るものを「水」と「橋」の二つに絞った。

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湖畔で下をのぞく。周囲40kmの湖が、水質全国1位を20回とっている理由

まず方角を確かめる。正面が湖で、対岸に山が並ぶ。周囲は約40km、最大深度約360m。環境省の公共用水域水質測定結果では、これまで20回も全国1位になっている。

岸から下をのぞくと石が見える。石を一つ拾って落とすと、沈んでいく形が最後まで消えない。ぼくが育ったオーストラリアの街の湖は濁っていて、底は見えなかった。水が透明なのは、どこの湖でも起きることではない。

湖畔に立って分かるのは、色よりも先に厚みだ。曇っていれば湖面も対岸も灰色に沈むが、透明さは天気と関係なく出ている。紅葉の予報は外れることがある。外したときに何を見るかを先に決めておくと、予定は壊れない。

石の多い岸辺から見た湖

石の多い岸辺から見た湖。足元の浅いところは底の石まで透けて見え、雲の切れ間から落ちた光の筋が水面に広がる。対岸は紅葉した山で、円錐形の峰が一つ立つ。湖の岸辺をイメージした生成ビジュアル

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対岸の恵庭岳は標高1,320mの活火山。噴気孔が今もある

湖を挟んだ対岸にあるのが恵庭岳で、標高1,320m。頂上に岩塔を抱いた円錐型の火山で、頂上付近に東向きの爆裂火口がある。火口から東へ延びる深い亀裂には数箇所の噴気孔があり、活火山に指定されている。アイヌ語のエ・エン・イワ(頭のとがった岩山)が名前の語源だ。

湖をつくった火山活動が、まだ終わっていない。その事実が対岸の一つの山に集まっている。登るなら上り約3時間半・下り約2時間40分だが、山頂部が一部崩落しているため、第2見晴台より先は立ち入れない。湖畔から見上げるのが、今の見方になる。

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山線鉄橋。この橋がここにあるのは、苫小牧まで木材を運ぶ線路だったから

湖から流れ出す千歳川に、歩いて渡れる鉄橋が架かっている。英国製200ftピン構造ダブルワーレン橋で、明治政府が明治15年に鉄道建築技師長として招いた英国人ポナールの設計。明治32(1899)年から北海道官設鉄道上川線の砂川・妹背牛間に架かっていたものが、大正12年頃の架け替えで外され、王子製紙の専用軽便鉄道の橋として支笏湖へ移された。

「山線」という呼び名は、苫小牧から日高方面の海沿いを走る鉄道を「海線」と呼び、支笏湖方面へ走る鉄道を「山線」と呼んだことに由来する。昭和42年に王子製紙から千歳市へ寄贈され、道路橋・歩道橋として使われてきた。平成7年から3年かけて解体修復され、平成9年11月に完成している。

苫小牧に泊まって支笏湖へ来るのは、地図の都合ではない。製紙の街とこの湖は、もともと一本の線路でつながっていた。その線路の名前が、今は橋の名前として残っている。足元の隙間から川が見えるので、渡るときは少しこわい。

板を渡した歩道の隙間から、下を流れる澄んだ川が見える

板を渡した歩道の隙間から、下を流れる澄んだ川が見える。紅葉の森の中を人が行き来し、親子が身をかがめて水をのぞきこむ。板張りの歩道と川をイメージした生成ビジュアル

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水中観光船は大人2,000円。窓は水深2mに約16、見るのは魚より水の厚み

乗り場は支笏湖温泉。運航は4月中旬から11月上旬まで、期間中無休で、9時から17時まで30分間隔(季節により変動)。大人2,000円。水中窓は水深2mにあたる位置にあり、約70cm四方のものが約16並ぶ。

つまりこの船は、深さ約360mの湖を、上から2mだけ切り取って横から見せる装置だ。岸の色を見ながら、同じ時間に水の中も見ることになる。目の使い方が忙しい。エンジンの音が椅子の底から伝わってくる。

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野鳥の森は約1.5kmのうち約400m。行く前に通れる区間を確かめる

支笏湖ビジターセンターから休暇村支笏湖の方向へ徒歩約15分で、森の入口に着く。そこから階段を登って約200m先に野鳥観察舎がある。観察路は全体で約1.5kmあるが、2015年10月の暴風雨で散策路の一部が崩壊し、観察舎より先は立入禁止。今使えるのは観察舎から約400mの区間だ。

道は舗装されていない。落ち葉が厚く積もっていて、踏むと音がする。シジュウカラ、ヤマガラ、ヤマゲラなどが生息していて、声は上から降ってくるが、枝が重なっていて姿は見えない。区間が短いぶん、行く前に通行状況を確かめておくかどうかで、使う時間が変わる。

古い鉄骨が交差する継ぎ目に丸い鋲が並び、塗装が剥げて鉄の肌があらわになっている

古い鉄骨が交差する継ぎ目に丸い鋲が並び、塗装が剥げて鉄の肌があらわになっている。足もとの板には紅葉が一枚。鉄の橋げたの質感をイメージした生成ビジュアル

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この街の歩き方

水の透明さは天気に左右されないので、曇っていても先に湖畔で下をのぞき、山線鉄橋で対岸の色の出方を見てから船に乗る。船の運航は4月中旬から11月上旬までなので先に押さえ、通れる区間が約400mに限られている野鳥の森は最後に回す。(料金・運航時間・通行止めは2026年9月時点の公表値)

苫小牧市中心部 → 支笏湖(国道276号・25km)約30分
JR千歳駅 → 支笏湖(北海道中央バス「支笏湖」行き・系統空4)約44分
支笏湖ビジターセンター → 野鳥の森入口徒歩約15分
森の入口 → 野鳥観察舎約200m・階段
観察舎から先の利用できる区間約400m
水中観光船9:00〜17:00・30分間隔・大人2,000円