使い込んだ木のカウンターで、スーツの男性が匙を運んでいる。皿は白い飯の半分を黒に近い濃いソースが覆い、衣の深い金色の揚げ物が切り分けてのる。隣には、古書店の紙袋から本の背が3冊のぞく。神保町のカレーをイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

神保町の古書店が靖国通りの北側に寄っているのは、店頭の本の日焼けを防ぐため。商売の都合が通りの向きを決めた街を、約130店の棚と大正13年創業のカレーで、二本の通りだけでたどる。
神保町の古書店は、靖国通りのほとんどが北側に寄っている。千代田区観光協会の案内では、北を向いている店が多いのは店頭に並ぶ本が日焼けするのを防ぐためだとされている。商売の都合が、通りの片側だけに街をつくった。私はこの日、後楽園に泊まり、夕方から3時間ほど神保町に出た。

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古書店が北側に寄っているのは、店頭の本を守るため

千代田区観光協会の紹介では、神保町は「日本一の古書店街」で、およそ130店の古書店が建ち並ぶ。駿河台下交差点から靖国通りを西へ向かうと、その並びが始まる。

歩けば分かるのは、棚が歩道に向かって開いていることだ。手を伸ばせば届く高さに、天地のそろわない本が詰まっている。背表紙を端から追いながら歩ける。

そして棚が出ているのは、通りの北側だ。観光協会の案内には、北を向いている古書店が多いのは店頭に並ぶ本が日焼けするのを防ぐためだと書かれている。南向きに棚を置けば直射日光が当たる。本を売るための条件が、そのまま通りの片側に店を集めた。これを知ってから歩くと、通りの左右の見え方が変わる。向かいには棚がない。

広い歩道のあるまっすぐな通り

広い歩道のあるまっすぐな通り。片側だけに古書店が切れ目なく続き、どの店の前にも手の届く高さの棚が歩道へ向かって出ている。棚が片側に寄っている通りをイメージした生成ビジュアル

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東京古書会館の即売展は、金曜と土曜に立つ

東京古書会館は千代田区神田小川町3-22にある。靖国通りから一本外れた位置で、神保町の交差点から歩いてすぐだ。

東京都古書籍商業協同組合が公開している開催予定を見ると、この会館の即売展は金曜と土曜に立つ。2026年の秋なら、10月30日・31日が東京愛書会、11月20日・21日が趣味の古書展、11月27日・28日が和洋会古書展。主催する会ごとに扱う分野が変わる。10月23日から25日の特選古書即売展のように、日曜まで3日間開くものもある。

だから出張の日程を金曜に寄せると、当たる週がある。会期外の夜に来るなら、外の告知だけ見て、次に当たる週を覚えておけばいい。約130店の古書店が通りに並ぶ街に、さらに週替わりの売場が一つ足される形になっている。

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靖国通りから一本入ると、すずらん通りは扱うものが変わる

すずらん通りは都営地下鉄神保町駅のA5出口から徒歩3分。靖国通りの棚を追う歩き方から、こちらに入ると通りの性格が変わる。観光協会の紹介では、書店を中心に画材屋や喫茶店が並ぶ通りとされている。

古書だけの通りではない。文房堂は創業明治20年の画材屋で、カレー店も交じる。本と絵と飯が一本の通りに収まっている。毎年秋には、この通りで神保町ブックフェスティバルが開かれる。

私は専門外の棚を見るのが好きだ。自分の仕事に関係のない分野の本がどういう言葉で書かれているかが分かって、話し方の参考になる。ただし買い込まない。出張中に本を増やすと荷物になるので、見るだけにして、必要なら後から取り寄せる。

古書店の細い通路

古書店の細い通路。床から天井まで両側が棚で、高さの不揃いな本が詰まり、上に横積みされたものもある。天井は蛍光灯、床はすり減った板。背表紙を端から追いながら歩ける棚をイメージした生成ビジュアル

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大正13年創業。地下1階で1人分のカレーを頼む

本は買わずに、昼の店に入る。スマトラカレー共栄堂は、神保町サンビルディングのB1にある。観光協会の紹介では大正13年創業で、黒に近い濃色のカレーソースを出す店だ。スパイス、肉、野菜の旨味を凝縮したものだと説明されている。

営業は月曜から土曜の朝11時から20時、ラストオーダーは19時45分。日曜が定休(2026年9月29日確認)。階段を下りて入ると、カウンターと小さなテーブルがあって、1人客が普通に座っている。黒いソースは皿の上で底が見えない。

この19時45分が、この街の夜の組み方を決める。棚を見てから食べるなら、19時前には階段を下りたほうがいい。逆に先に食べると、靖国通りの棚が片づく時刻に間に合わなくなる。飲み代の上限は3000円と決めているが、この夜はカレー一皿で終わる。

小さな木のカウンターの上の一皿

小さな木のカウンターの上の一皿。飯に黒に近い濃いソースがかかり、とろりとして皿の底が透けない。脇に金属の匙と水のグラス。ソースの表面からまだ細く湯気が立つ。底が見えない濃さをイメージした生成ビジュアル

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水道橋から一駅。後楽園に泊まって神保町に出る

東京都交通局の路線案内では、都営三田線の神保町(I-10)の隣が水道橋(I-11)だ。後楽園に泊まる夜は、この一駅で神保町に着く。

出たほうがいい。神保町は約130店の古書店とその客で、平日の夜も人が一定にいる。予定が読める街だ。しかも古書店とカレー屋と画材屋が、靖国通りとすずらん通りの二本にほぼ収まっている。二本を押さえれば街の大半が入る。

翌朝、もう一度靖国通りを歩いた。歩道に向かって開いていた棚は、まだ出ていない。棚がないと通りの左右がよく見えて、店が北側に寄っているという配置は朝のほうが分かりやすい。夜は背表紙で、朝は建物の並びで店を覚える。

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この街の歩き方

水道橋 → 神保町(都営三田線)隣駅(I-11 → I-10)
東京古書会館(神田小川町3-22)の即売展毎週 金・土
靖国通りの古書店(約130店・多くが北向き)駿河台下交差点から西へ
神保町駅A5出口 → すずらん通り徒歩3分
スマトラカレー共栄堂(神保町サンビルディングB1)月〜土 11:00〜20:00(L.O.19:45)/日曜定休