漁港の脇に立つ朝の露店市。白い天幕が何列も奥へ続き、その下の低い台と砕いた氷の上に、銀色の魚が並び、浅い盆に貝が盛られる。前掛けとゴム長靴の売り手、袋を提げて見て回る客。閖上のゆりあげ港朝市をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

ゆりあげ港朝市は、1976年に閖上漁港の岸壁で始まりました。漁師や農家が自家用の余剰品を並べたのが元です。閖上は「ゆりあげ」と読みます。いまは毎週日曜と祝日、午前6時から午後1時まで、宮城県名取市閖上東3丁目で開きます。妻と2人、朝市が開いている時間のなかで、まわりの数百メートルまで歩きました。

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50以上の露店。内訳は食事・軽食が26店

出店は50を超えます。公式の内訳では、海産物が8店、野菜・果物が6店、食事・軽食が26店、スイーツが5店、生花が1店、メイプル館のなかに5店。半分が食事と軽食で、魚を買って帰る場所というより、その場で食べる場所の比重が大きい構成です。通路が何本もあって、端まで見通せません。氷と水のにおいがして、足元は濡れたままです。私は並んでいる魚の名前を半分も言えませんでした。売り手に聞けば教えてくれるので、名前を覚えることのほうが先になります。食事・軽食が26店あるということは、買った魚をその場で焼いてもらう、あるいは焼いたものを買って食べる動きが、この市の主な過ごし方だということです。手ぶらで来て、通路のあいだで食べて帰ることもできます。

長い通路の端から奥を見る

長い通路の端から奥を見る。白い天幕の店が何列も平行に並び、足元は濡れている。その先は低い建物と、平らなまま続く土地。台に身を乗り出す客、箱を抱えて振り返る人がそれぞれにいる。通路が何本もあって端まで見通せない市をイメージした生成ビジュアル

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岸壁の余剰品から始まり、津波で全部流された

1976年に岸壁で始まった朝市は、2011年3月11日の東日本大震災の津波で、50軒以上の店舗と施設が完全に流失しました。再開は同じ年の3月27日、震災から16日後です。場所はイオンモール名取の駐車場でした。50軒以上が流れた16日後に、別の場所で朝市が開かれている。この市が何を土台にして続いているかは、その二つの日付のあいだに出ています。いま歩いている通路は、元の岸壁ではなく、戻ってきた場所です。漁港の余剰品を並べる市から始まって、いまは50を超える露店と本設の建物を持つ市になっています。

白い天幕の下の魚の店

白い天幕の下の魚の店。砕いた氷の上に魚と貝と魚卵が並び、足元のコンクリートは濡れている。台の内側で売り手が手を動かし、前に客が厚く集まる。天幕の列の先は、まっすぐな低い堤防とその上の空だけ。土地がどこまでも平らであることをイメージした生成ビジュアル

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午前10時のセリ。声は低いまま遠くまで届く

日曜は午前10時からセリがあります。その時間に合わせて通路を戻ると、人が集まって声が飛んでいました。声は低いまま遠くまで届いて、聞き取れるのは最初の一音だけです。売り買いの言葉が分からなくても、どこで人が濃くなっているかは音で分かります。6時台の朝市は通路が空いていて、10時前後で人の密度が変わります。同じ市の中で、時間によって歩きやすさが違います。午後1時で終わるので、10時のセリを見てから残りを回すと、ちょうど収まります。

串に刺した魚が、赤くなった炭の上で焼かれている

串に刺した魚が、赤くなった炭の上で焼かれている。皮がふくれて焦げ目が散り、湯気が横へ流れ、風が通るたびに炭が明るくなる。金属のトングが縁に置かれ、串が一本だけ向きを変えたまま立つ。買ってその場で焼いてもらう過ごし方をイメージした生成ビジュアル

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メイプル館はカナダ産の木材。木曜は定休

朝市の敷地に建つ木造の建物が、ゆりあげキッチン&ギャラリー メイプル館です。2013年5月に、カナダ政府・国民からの多大な支援により完成した本設施設で、カナダ産の強固な木材で作られています。露店が畳めるのに対して、こちらは畳めない建物です。中に入ると木のにおいがします。嗅ぎ慣れないにおいで、壁の木肌は明るく、手を当てると乾いています。開いているのは、日曜・祝日が午前6時から午後1時まで、月曜から土曜が午前10時から午後4時まで。木曜が定休です。館内にも5店が入っているので、雨や風の日はここが逃げ場になります。

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徒歩2分の祈りの碑、約1.2キロのかわまちてらす

朝市から約0.5キロ、徒歩約2分のところに名取市震災メモリアル公園があります。高さ8.4メートルの「祈りの碑」が建っています。名取市震災復興伝承館も約0.5キロです。名取川沿いのかわまちてらす閖上は約1.2キロ、車で約3分。川に面して店が入っていて、水の面が広く、風があります。朝市で人の密度を見たあとに川沿いへ出ると、同じ地区のなかで音の量が一段落ちます。歩いて回れる範囲に、市と碑と伝承館と川沿いの店が入っているということです。

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この街の歩き方

朝市の営業日曜・祝日 午前6時〜午後1時(ゆりあげ港朝市)
セリ日曜 午前10時〜(同)
朝市 → 名取市震災メモリアル公園約0.5km/徒歩約2分(同)
朝市 → 名取市震災復興伝承館約0.5km(同)
朝市 → かわまちてらす閖上約1.2km/車で約3分(同)
メイプル館日曜・祝日 6時〜13時/月〜土 10時〜16時・木曜定休(同)

朝市が午前六時開始なので、前泊して六時台に入ると通路が空いています。午前十時のセリに合わせて一度戻り、そのあと徒歩二分のメモリアル公園と伝承館、車で三分のかわまちてらす閖上へ。朝市は日曜と祝日だけで、メイプル館は木曜が定休なので、日曜か祝日に合わせれば両方が同じ時間に開いています。