ケヤキ並木の歩道で、紙コップと紙袋を手にした二人が笑い合う。朝の光が黄色い葉を透かし、通りの奥まで金色に染める。仙台駅前の朝の通りをイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)

仙台駅の西口から徒歩五分の中に、空襲で焼けた駅前から始まった通りが二本あります。戦災復興事業でケヤキを三列植えた青葉通と、焼け野原に立った露店から七十軒になった朝市の通りです。駅へ戻る途中には自然光を通す天井をかけたアーケード街があって、その真ん中に商売繁盛の神が祀られています。泊まったのは駅前の宿で、朝の一時間半、ひとりで一人分の朝ごはんを探しながらこの順に歩きました。混んだ店に入るのは苦手です。

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青葉通のケヤキは三列。歩道が広いのは、車線を削ったから

宿を出て西へ向かうと青葉通です。仙台市の説明では、この通りのケヤキ並木は三列。戦災復興事業で植えられたもので、駅から広瀬川や仙台城跡のある青葉山の方へ続いています。

三列あると、枝が頭の上でつながります。朝の光が葉のすきまから落ちてきて、足元がまだらになります。歩道がとても広くて、まっすぐ歩いても誰にもぶつかりません。

広い理由も市の説明に書いてありました。平成二十九年に、東二番丁通りから西公園通までの車線を削減して、ゆとりある歩行空間を創出する再整備が終わっています。もとは車が通っていた幅が、いまは歩く側に回っているということです。朝は駅へ向かう人の流れと逆方向になるので、西へ歩くとほとんど人とすれ違いません。

ケヤキ並木の広い歩道

ケヤキ並木の広い歩道。手前を紙コップと紙袋を手にした人が歩き、左の店先では前掛けの店員が品物を並べている。奥へ通勤の人が続き、車道の向こうをバスが通る。並木の通りをイメージした生成ビジュアル

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朝市は八時から。七十軒の通りは、駅前の露店から始まった

青葉通を引き返して、朝市の通りに入ります。JR仙台駅から約五分。七十ほどの店舗が一本の道に並び、営業は八時から十八時、日曜と祝祭日は休みです。

この通りの始まりは、朝市商店街の公式サイトに書いてありました。昭和二十年、空襲で焼け野原になった仙台駅前に多くの露店が立ち並び、そこに生まれた通称「青空市場」が起源だと伝えられています。組織になったのはずっとあとで、昭和六十年に商店街連合会が発足し、平成四年に振興組合になっています。

青空市場という呼び名のとおり、通りの上には屋根がありません。声が上に抜けていって、跳ね返ってきません。アーケードの商店街を想像して来ていたので、空がそのまま見えるのは意外でした。入って十メートルで、魚がまるごと段ボールに積んであるのが見えます。

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一人分は端まで歩くと出てくる。揚げ物の店は十時から

入口の方は箱や束の単位が多くて、最初は自分が買えるものがないように見えます。そのまま端まで歩くと、旬の魚や野菜のほかに、総菜と果物が一つずつの単位で出てきます。パックに値段が貼ってあるので、見ればそのまま買えるとわかります。

時間で分かれるものもあります。揚げ物の齋藤惣菜店ころっけやは十時から十七時、日曜と祝日が休みで、じゃがじゃがコロッケが九十円、メンチカツと串カツが百五十円です。八時台に歩くなら並んでいる生鮮と果物を買い、十時前後まで街にいられるなら揚げ物を足す、と決めておくと迷いません。

買ったものは通りの端で立って食べました。立って食べている人がほかにもいるので、その場所は立って食べていい場所だと判断できます。誰もこちらを見ません。入口だけ見て引き返すと一人分の店に届かない。この通りで先に知っておくべきことは、それだけです。

朝の市場の通り

朝の市場の通り。魚を並べる店主、野菜を選ぶ人、立ったまま丼をかき込む人が、それぞれ別のことをしている。朝の市場の通りをイメージした生成ビジュアル

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東へ戻ってアーケードへ。クリスロードの天井は自然光を通す

朝市を出て東へ歩くと、屋根のある通りに入ります。クリスロード商店街は公式の説明で「自然光を透過する明るくて近代的なアーケード商店街」とされていて、仙台駅から歩いて五分の距離です。

空の下から屋根の下へ入ったのに、暗くなりません。上から光が落ちてくるところは朝市と似ていて、違うのは音です。天井があるぶん、人の声と足音が横にたまります。

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商店街の真ん中にお堂。商売繁盛の神が街の中心にいます

店と店のあいだに、いきなりお堂が建っています。三瀧山不動院で、青葉区中央二丁目、旧新伝馬町に鎮座する真言宗智山派の加持祈祷の寺です。沿革は定かではないものの、慶応元年(一八六五年)の記録が残っていると公式サイトに書かれています。

中に、着物を着て笑っている男の人の像があります。仙台四郎です。江戸時代末期から明治三十五年頃に仙台に実在した人で、ふらりと立ち寄る店は必ず繁盛すると伝えられ、いまも市内の多くの店に置物や色紙が飾られています。

商人の通りの真ん中に、商売繁盛の神がいる。街の側が神様を囲みに来た形です。ここを見てから商店街の店に入ると、レジのわきを見る癖がつきます。同じ顔の置物が何軒にも置いてあります。線香のにおいがして、一歩入ると音が減ります。外は商店街なのに、自分の足音しか聞こえません。

帰りはハピナ名掛丁商店街へ。仙台駅からもっとも近いアーケード街とされている通りなので、ここを選ぶと駅まで迷いません。

網の上に揚げたてのコロッケが並び、割った断面から湯気が立つ

網の上に揚げたてのコロッケが並び、割った断面から湯気が立つ。奥には串に刺した揚げ物も見える。揚げたての惣菜をイメージした生成ビジュアル

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この街の歩き方

仙台駅西口 → 仙台朝市徒歩約5分
仙台朝市(約70店が一本の道)8時〜18時・日曜と祝祭日は休み
仙台駅 → クリスロード(三瀧山不動院)徒歩約5分
朝市の揚げ物(齋藤惣菜店ころっけや)10時〜17時・日曜と祝日は休み
ハピナ名掛丁 → 仙台駅駅からもっとも近いアーケード街

朝市は八時から、揚げ物の店は十時からなので、八時台に入るなら生鮮と果物で一人分、十時前後まで残れるなら揚げ物を足す、という順にすると買い物が決まります。青葉通を先に歩くのは、朝は駅へ向かう人の流れと逆方向になって、広い歩道をまっすぐ進めるからです。