まっすぐな石畳の参道の正面に、朱塗りの二階建ての門が立つ。灰色の瓦屋根。東京・芝公園をイメージした生成ビジュアル(実際の現地写真ではありません)
4世紀の古墳、1611年の門、1906年の人工渓谷、333メートルの塔が同じ公園に重なっている。芝公園は立つ高さを変えるたびに見えるものが入れ替わる場所として歩く。
芝公園は、増上寺の門前から東京タワーの足元までを包むように広がっています。面積は122500平方メートルあまり。1873年10月19日の開園で、上野・浅草・深川・飛鳥山と並ぶ、日本で最初に指定された五つの公園のひとつです。11月の終わり、夕方の予定が空いたので、御成門の近くの宿からひとりで歩きました。
門の外に立つ。1611年の朱漆の門と、333メートルの塔が縦に重なる
増上寺の三解脱門は、慶長16年(1611年)に幕府大工頭の中井正清とその配下によって建てられました。三戸2階二重門、入母屋造、朱漆塗。唐様を中心に和様の勾欄などが加わった形で、国の重要文化財です。
くぐる前に、まず外から見ます。門の朱、その向こうに大殿の屋根、さらに向こうに東京タワー。高さ333メートルの塔が門の背後にまっすぐ立つので、正面から少し引くだけで三つが縦に積み重なって1枚に収まります。
増上寺は600年の歴史をもつ寺で、徳川家康ゆかりの秘仏「黒本尊」を祀ります。大殿は昭和49年(1974年)の再建で、首都圏では最大級の御堂です。境内の奥には徳川将軍家墓所があり、2代秀忠、6代家宣、7代家継、9代家重、12代家慶、14代家茂の6人が葬られています。門が1611年、大殿が1974年、塔が昭和。同じ範囲に建った年が300年以上ばらけています。
丘に上る。全長110メートルの前方後円墳が、公園の奥に残っている
年代のばらけは、300年ではおさまりません。公園の奥に芝丸山古墳があります。全長110メートル、後円部の径は約64メートル。都内最大級の前方後円墳で、4世紀後半に築造されたと考えられています。
階段を上ると、上は平らな広場です。木が茂って墳丘の形は分かりませんが、上った高さの分だけ、たしかに盛られています。墳頂から木々の隙間を探すと、赤い鉄骨が断片で見えます。全部は見えません。枝の切れ目を探して立つ位置を変えると、塔の見え方が数歩ごとに変わります。
4世紀の墳丘と、1611年の門と、昭和の塔が、ひとつの公園の中にあります。

平らで広い公園。芝生に大きな古木が点在し、葉は赤、黄、常緑の緑が混ざる。芝の向こうに木の茂った土の丘が数メートルだけ盛り上がり、端に階段がつく。木に隠れて形の読めない墳丘をイメージした生成ビジュアル
谷に下りる。「もみじ谷」は1906年に造られた人工の渓谷
墳丘を下りると、道が公園の低いほうへ向かいます。上は芝と大木の広場で見通しが利きますが、下るにつれてモミジが増え、足元に水の音が入ってきます。丘の上と谷の底では、植わっている木が違います。
もみじ谷は人工の渓谷です。1906年、造園家の長岡安平の設計で造られました。滝は「紅葉滝」と呼ばれ、高さ10メートルの岩場から2段に落ちて渓流に注ぎます。

公園の地面より低いところに切られた細い谷。壁は岩を積んだもので、底に浅い流れが走る。山ではなく街の中であることをイメージした生成ビジュアル
自然の地形をなぞったのではなく、ここを渓谷として見せるために岩が組まれています。かつてこの付近には天然の滝と湧水があり、奥深い山の雰囲気が残っていた——長岡がここに滝を造った理由はそう説明されています。失われた水の景色を、庭として置き直した場所です。
滝を背にしてモミジを寄りで撮ると、水しぶきが光って白く飛びました。2段のうち下の段まで下がると、滝とモミジが縦に重なります。

濡れた黒い岩と苔の上に、赤と橙の葉が重なって落ちている。薄い水の膜が石の上を流れ、葉が何枚か流れに捕まっている。手を置けそうなほど冷たく見える水際をイメージした生成ビジュアル
塔に上る。地上150メートルから、歩いた範囲が1枚の面になる
谷の下まで下りたら、あとは上がるだけです。東京タワーのメインデッキは地上150メートル。その上、250メートルにトップデッキがあります。
メインデッキから真下を見ると、歩いてきた芝公園の樹冠が広がっています。歩いているときは一本ずつ見ていた木が、上からだと面になります。赤と黄と、まだ緑の常緑樹が混ざり、増上寺の屋根も古墳の丘も、その面の一部として見えました。
古墳の丘は、盛り上がりで分かります。地上では木に隠れて形の読めなかった墳丘が、上からだと周囲との高さの差で読めます。逆に、滝は樹冠の下なので見えません。122500平方メートルが、1枚の面として目に入ります。この公園は、立つ高さを変えると見えるものが入れ替わります。
日が落ちてから、門の外にもう一度立つ
暗くなってから、増上寺の前に戻りました。門と屋根と塔の重なり方は同じで、光の位置だけが入れ替わっています。同じ位置に2回立つと、2枚目に、あいだで見たものが入ってきます。
この街の歩き方
| 都立芝公園 | 1873年10月19日開園/面積122,501.09平方メートル |
|---|---|
| 増上寺 三解脱門 | 慶長16年(1611年)建立・国の重要文化財 |
| 芝丸山古墳 | 全長110メートル/後円部径約64メートル |
| もみじ谷「紅葉滝」 | 高さ10メートルの岩場から2段に落下 |
| 東京タワー メインデッキ | 地上150メートル(トップデッキは250メートル) |
